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~アミノ酸による肌のうるおい、バリア機能改善の新技術~

味の素㈱、4つの"美肌タンパク質"へのアプローチを新発見

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 味の素株式会社(社長:中村 茂雄 本社:東京都中央区)は、香粧品事業推進の一環として、かねてから続けてきた肌とタンパク質およびタンパク質を構成するアミノ酸の関係に関する研究において、肌に存在する4つのタンパク質が角層水分量等の肌状態と関連していることを発見しました。

 本研究で新たに分かったことは次の点です。
 ・皮膚の細胞接着で知られるタンパク質・デスモグレイン-1は角層水分量と相関がある
 ・アミノ酸の架橋反応※1で知られるタンパク質・トランスグルタミナーゼ-3は角層水分量と相関がある
 ・アルギニンの代謝で知られるタンパク質・アルギナーゼ-1は角層水分量と相関がある
 ・フィラグリンタンパク質の分解で知られるタンパク質カスパーゼ-14は皮膚バリア能と相関がある
 ※1)分子同士を結合させ、その構造を変えることで新たな機能を生みだす反応

上記4種のタンパク質は皮膚角層中で特定のアミノ酸との相関関係が見いだされており、細胞培養系で相関が見いだされた任意の組み合わせのアミノ酸を添加することで目的タンパク質の産生を促進する可能性が示唆されました。本研究成果を応用し肌の30%(水分を除くと同75%)を占めるタンパク質を、タンパク質の構成要素であるアミノ酸を通してケアすることで、そのタンパク質が本来持つ可能性を引き出し、関連する肌状態の改善につながる製品やサービスの開発を進めていきます。

研究の背景はアミノ酸による肌改善アプローチ「アミノ美肌理論®」
 アミノ酸(誘導体含む)は肌の天然保湿因子の主成分であり、皮膚の恒常性維持や肌状態改善に重要な要素として古くから研究されてきました。保湿成分という認識が浸透する一方、当社は、保湿効果だけではないアミノ酸の有用性を探るべくアミノ酸と肌状態とのより詳細な関係性の研究に着手しました。複数の肌状態と複数の角層内成分を同時に測定することで肌状態と関連する成分を特定し、それらがどのように肌状態に影響するのかについての知見を集め、これらを基に肌状態と関連するタンパク質をアミノ酸でサポートするというアプローチを見出しました。当社はこれらアプローチを始めとしたアミノ酸によるトータルな肌改善を「アミノ美肌理論®」として提唱しています。
 「アミノ美肌理論®」研究の成果としてこれまでに、シワに関連するタンパク質と特定のアミノ酸の相関関係を国際学会で報告しています。

健康な肌状態と相関のある4つのタンパク質“美肌タンパク質”を発見
 65名(26~62歳)の女性にご協力頂き、複数の肌状態について測定し、同時にテープストリッピング法による角層採取をおこないました。採取した角層のプロテオーム解析を行い、肌状態データとの相関解析※2から、4つのタンパク質が皮膚バリア能(経表皮水分蒸散量)または角層水分量と相関していることを見いだしました。これらのタンパク質と肌状態の直接的な関係性についてはこれまでにほとんど報告されてきませんでしたが、今回得られた結果から、これらの“美肌タンパク質”を増やすことが肌状態改善につながることが期待されます。

 ■皮膚バリア能(経表皮水分蒸散量)と相関するタンパク質
  ・カスパーゼ-14:角層でのアミノ酸産生

 20250701図①.png

 ■角層水分量と相関するタンパク質
  ・トランスグルタミナーゼ-3:CE※3の形成
  ・デスモグレイン-1:細胞同士の接着
  ・アルギナーゼ-1:角化促進※4

 20250701図②.png

 ※2)解析対象は39歳以下の30名分データ
 ※3)コーニファイドエンベロープ、角層細胞を包む膜状構造
 ※4)Br J Dermatol. 2025 Feb 14:ljaf057.

 これらのタンパク質は肌状態と関連する可能性がある機能を有することがこれまでに報告されています。例えば、トランスグルタミナーゼ-3は、インボルクリンやロリクリンといった複数種のタンパク質を架橋し、角層細胞を包む膜状構造を形成します。この膜状構造、CE※3が丈夫に作られることが理想的な角層の形成に繋がり、角層水分量等の肌状態を良好に保つことが期待されます。

20250701図③.png

アミノ酸が“美肌タンパク質”をサポート
 前述の4つのタンパク質はそれぞれ特定のアミノ酸と相関関係が認められました。 
これら4つのタンパク質を始めとしたすべてのタンパク質は、人の体を構成するのに用いられるアミノ酸20種より構成されますが、当社は、「特定のタンパク質と相関関係にあるアミノ酸はそのうちの数種であること」、さらに「タンパク質ごとに相関するアミノ酸種は異なること」を見出し、タンパク質ごとに異なる特定のアミノ酸を選定しました。つまり、肌状態を改善するには目的に合わせたアミノ酸を選ぶ必要があり、当社はアミノ酸の活用というアプローチを提唱するに至りました。一部のタンパク質とアミノ酸の組み合わせについては、培養細胞においてアミノ酸の添加によるタンパク質の増加も確認しています。

 ■タンパク質と関連するアミノ酸
 
20250701図④.png

 今後は、当社独自のアミノ酸系化粧品素材の技術を活かし、誘導体をも包含したアミノ酸を体の内外で摂取(塗布、経口摂取)または適用(皮膚や頭髪の洗浄)し、肌状態を健康的に美しく保つことを目指した研究をさらに発展させ得られた技術を当社グループ製品に応用するなど積極的に活用し、美しい肌づくりへの貢献を目指します。


 



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