味の素株式会社(社長:中村 茂雄 本社:東京都中央区)はこの度、iPS細胞※1由来の医薬品開発に不可欠な、細胞分化誘導プロセスを最適化するためのAIプラットフォーム技術開発を手掛ける米国のスタートアップ企業Somite Therapeutics Inc.(最高経営責任者:Micha Breakstone 拠点:米国・ボストン以下Somite社)への出資を完了しました。本出資は当社のコーポレートベンチャーキャピタル、Ajinomoto Group Ventures※2によるスタートアップ投資案件であり、本件を通じて、細胞治療や再生医療といった先端医療におけるイノベーション創出に向けた取り組みを強化していきます。
※1)人間の体の細胞に、数種の因子を導入することで誘導される人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell)。様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(pluripotency)とほぼ無限に増殖する能力を合わせ持つ
※2)2020年より活動を開始した当社コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)をAjinomoto Group Venturesとしてブランド化
細胞治療・再生医療分野は成長市場であり、2030年には12兆円、2050年には38兆円以上のグローバル市場規模となることが予想されています※3。2012年に山中 伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞して以来、世界中でiPS細胞を用いた治療法の開発が取り組まれ、その治療法の普及が望まれてきました。しかしながら、iPS細胞を目的の細胞へ分化させる工程は多段階かつ複雑で多数のシグナル分子が関与するため、最適なプロトコルの確立には時間と費用がかかることが課題でした。
※3)出典:2020 経済産業省 再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業複数課題 プログラム 中間(終了時)評価検討会(regenerative_medicine_1st_05.pdf)
Somite社は、発生生物学・幹細胞生物学・遺伝子解析技術分野の世界トップクラスの教授陣とAI専門家が結集し、iPS細胞から分化可能なあらゆる細胞の製造法について、デジタルツインを用いて最適解を提供できるプラットフォーム技術の開発を手掛けています。同社技術の応用により、iPS細胞からの細胞分化を従来と比べ短時間かつ安価に最適化することが可能となるため、細胞治療・再生医療の課題解決に向けた効率的なアプローチとしての実用化への貢献が今後期待されます。
当社はヘルスケア領域においてCDMO(Contract Development & Manufacturing Organization:開発・製造受託会社)事業と培地事業の拡大、およびそれらが融合した先端医療分野の事業開発のプロセスの一環として、本出資を位置付けています。当社はこれまでに、京都大学のiPS細胞研究所(CiRA)との共創を通じ、高性能培地のStemFit®を開発し、再生医療の実現に貢献してきました。当社グループが細胞治療・再生医療の先端医療イノベーションにつながる投資機会を模索する中で、Somite社への出資は、同社先端技術との連携により当社で培ったCDMO事業や培地事業における知見や技術、ノウハウの新たな活用を可能にする機会であり、細胞治療・再生医療のマーケットと技術開発の発展への大きな貢献が見込まれます。
当社グループは「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志(パーパス)のもと、CVC活動をはじめ、グローバルにインテリジェント機能の発揮やパートナリング戦略の構築等の継続的な活動強化への取り組みを通じて、2030ロードマップの実現を目指します。
参考

■Somite Therapeutics社概要
(1)社名 :Somite Therapeutics Inc.
(2)所在地 :米国・ボストン
(3)設立時期:2023年
(4)代表者 :CEO Micha Breakstone
(5)事業内容:iPS細胞の分化誘導プロセス最適化を可能とするAIプラットフォーム技術と、それを用いたiPS細胞由来の細胞医薬品の開発
(6)従業員数:20名
(7)ホームページ:https://www.somite.ai/